クラブEKO

 
  • フォントサイズを増やす
  • デフォルトのフォントサイズ
  • フォントサイズを減少させる
Home 音楽の広場 音楽療法 日本、世界そしてスウェーデンの音楽療法の定義

日本、世界そしてスウェーデンの音楽療法の定義

いろいろ違う考え方


日本では、特に90年代から音楽療法というものが一種のブームのようになり、数々の議論が行われる中、いろんな意味での進展も遂げながら、今はそのブームもある意味で少し落ち着いてきたようにも思える。

そんな中で「今更音楽療法の定義について…」と思われるだろうが、これから音楽療法を学ぼうとする人はもちろんのこと、自分では既にその領域に達したと思っている音楽療法士にしても、「音楽療法とは何だろうか?」、「自分のやっていることは音楽療法なのか?」と、自問自答することは大切なことではないだろうか?

「音楽とは何か?」という問いにしても、万人が納得する答えや普遍的な定義はない。「神とは何か?」「幸福とは?」などと同じように、ある意味で形而上的な概念である。

また、音楽療法の定義は、世界共通ではない。

さらに、「音楽療法は、心理療法である」という人もいれば、医療行為と見る人もいる。あるいは、医療的・心理的な行動というように、幅を広げて解釈をする人もいるし、また、特に福祉の現場で音楽療法をする人の中には、敢えて医療ということばを避けて、社会的な参画やQOLに焦点を当てようとする人もいる。

だからこそ、誰もが、「自分にとって音楽療法とは何か?」という課題を、実践を通して考え、自分自身で掴み取ることが大切になる。
そこで、改めて「音楽療法とは何か」という課題について、日本と世界、そしてスウェーデンの定義を提示してみたい。


1.日本音楽療法学会の定義

「音楽療法とは、音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行為の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること」

2.世界音楽療法連盟の定義、(1996年)

「音楽療法とは、身体的、情緒的、精神的、社会的、認知的なニーズに対して、コミュニケーション、人間関係、学習、動員、表現、組織化、その他の療法的な目標の促進を容易にしてゆく過程の中で、その資格をもつ音楽療法士が、個人のクライエントあるいはグループとともに、音、リズム、メロディーやハーモニーなどの音楽の要素を使うことである。音楽療法は、自己の内面や対人関係のそれぞれの統合がより良くなるように、個人の機能の回復や可能性の発達に目を向け、その結果、予防やリハビリテーションあるいは治療などによって、より高い生活の質(QOL)に到達することを目指すものである。」

日本の学会の定義と世界音楽連盟の定義には、音楽の使い方や、音楽療法士自身の姿勢とか治療の捉え方に、少なからず違いがあるのがわかる。
日本の定義には、「音楽の持つ、生理的、心理的、社会的働きを用いて」という表現があるが、世界音楽療法連盟の定義では、「音、リズム、メロディーやハーモニーなどの音楽の要素を使う」という言い方をしている。

つまり日本では、音楽は、生理的、心理的、社会的な働きを持ち、それを用いて、対象となる人、この場合は、心身の障害のある人の障害の回復や機能の維持と改善、低い生活の質をより高く、そして、不都合と思われる行為を好ましいように変容するように、意図的に計画的に使うということである。
端的にいえば、対象となる人は、心身に障害があり、低い生活の質を持ち、不都合と思われる行為をする人で、治療ということばはないにしろ、結局は、不都合と思われるものに対しての治療に音楽を使うという意味に解釈できる。

世界音楽療法連盟の捉え方では、「音楽の、生理的、心理的、社会的な要素を利用する」とは言っていない。音楽は、「コミュニケーション、人間関係、学習、動員、表現、組織化、その他の療法的な目標の促進を容易にしてゆく」過程の中で使うものであるとしている。

簡単に言えば、「音楽療法というものは、いろいろな療法的な目標を進めていくときに、それがもっと容易になるように、リズム、メロディーやハーモニーなどの音楽の要素を、個人やグループと一緒に行うもの」ということである。
つまり、目標に達する手段は音楽の要素自体にあるのではなく、「療法的な目標」を進めていく療法士と、一緒に音楽をする対象者との相互関係の中にあるというように解釈できる。

また、音楽療法の対象は、「身体的、情緒的、社会的、認知的ニーズ」ということであるから、特定の専門家が対象となる人を診断して「悪いところを治す」というニュアンスではなく、むしろその対象になる人の「ニーズを満たすもの」という捉え方になる。
そして、ある特定の人の「悪いところ、不都合なもの」を良くするとか、音楽によって機能の回復や維持を図るのでなく、「それぞれの機能の回復や発達ということに目を向けて音楽をすることで、自分の内部や人との関係に安心感と信頼感が生まれ、その結果、健康予防やリハビリや治療などによって、QOLが向上するようにする」のが目的ということである。

治療に音楽を使いはするが、治療というものはもっと総合的なもので、また治療する側とそれを受ける側の人間関係というものが、音楽の効果よりもより重要視されていることが伺える。また、音楽療法が目指すものは、単に障害の回復や機能の維持とか行動の変容というものではなく、それらを踏まえて、もっと別の次元で、生活の質を高いものに到達する試みであるということではないだろうか。

3.スウェーデン

ショーヴィーク国民高等学校の定義

音楽療法は、教育を受けた音楽療法士が、個人あるいは集団に対し異なる方法を用いて、身体的、情緒的、精神的、社会的、認知的なニーズを満たすために、音楽や、あるいは音楽的な活動を調和させて使うものであると定義づけられる。音楽療法士は、発達心理的な考えに立ち、音楽療法士としての能力と責任の中で、特別教育的な視点で、文化や余暇の分野で活動を行なう。

ストックホルム王立音楽大学の定義

音楽療法は、教育を受けた音楽療法士が、個人あるいは集団に対し異なる方法を用いて、身体的、情緒的、精神的、社会的、認知的なニーズを満たすために、音楽や、あるいは音楽的な活動を調和させて使うものであると定義づけられる。音楽療法士は、精神力動的な考えに立ち、音楽療法士としての能力と責任の中で、音楽心理療法、特別教育、医療の分野で活動を行なう。

FMT教育の定義

音楽療法は、教育を受けた音楽療法士が、個人に対して一つの方法で、個人の機能のレベルを向上させ、それによってより良い発達と健康を計るために、音楽や音楽的な活動を調和させて使うものであると定義づけられる。音楽療法士は、発達理論に立ち、音楽療法士の能力と責任の中で、機能の低下に対して活動を行なう。


 

 

オンライン状況

現在
 ゲスト 15 人
 がオンラインです