⚫︎北の町、オーベルカーリックス
オーベルカーリックス(Överkalix)というのは、おそらく海外旅行に詳しい日本の人にしても、あまり聞いたことのない地域だとは思います。
スウェーデン人でも、「カーリックス」というこの地域の比較的大きな町のことは「北にある町」として知っている人が多いので、「大体その辺だな…」といった程度の認知度だと思いますね。
僕の場合は、昔からの仲の良い友達がそこに引っ越して、何回か訪ねにいったことがあるので知っているわけですが…
僕は、この北極圏のすぐ近くにある町が大好きです。
ストックホルムからは、車で行くとE4ルートを通って約1000キロ、まっすぐ走り続けても約11時間半かかりますから、普通だとどっかで1泊する距離です。
分かりやすいように日本語でググると「エベルカーリックス」って出てきますが、このÖverkalixの「Ö」というのは、発音的にはオとエの中間というか、何とも独特の発音で、外国人にはすごく発音しにくい音で、エと出るのも仕方ないかな…って感じですけどね…。
とにかく…このオーベルカーリックスに行くのには、このE4ルートの他にも、ダーラナ地方を通って行くという手もあります。
E4ルートだと、ウプサラを超えてイェーブレを過ぎるとバルト海沿いに海岸線を通るので、まぁ、それぞれの町を堪能するにしても、あまり変化は期待できないかも…ですね。
なので、僕が行く時はダーラナを通って、ヨックモックというサーメ色の強い地域も通って…という道になることが多いです。
オーベルカーリックスの中心地は、スウェーデンでも大きい川の一つであるカーリックス川と、その脇を流れるエンゲセ川が合流して出来た中洲にあります。
オーベルカーリックス市は、広さが2919㎢ですから、神奈川県よりもちょっと広いという面積に、人口は全域で3300人、そのうち市街地に住んでいるのはおよそ1000人ですから、分かります?…この人口密度の少なさ…。
そうなんです、町の一歩外は、全くの原野です。
それも、ラップランドの大原野で、車で何時間走っても周りは森林と湖…。
北に50キロ行くと、「ここからは北極圏」という看板が立ってます。
この看板のあるところ、つまり北極圏の線上のうえをピョーンと飛んで越えると、またこの地に帰ってくるという話ですから、「トレビの泉」のコインみたいな話です。
でも、とにかくここまで来ると「北極圏」。
当然、サーメ人が住んでいますし、今は観光客にサーメ小屋も見せてくれます。
サーメ人といえば、これまた当然のようにトナカイがいます。
それも…おびただしい数の…。
まぁ、こんな数のトナカイの中にいてもしょうがないですけど、ちゃんと観光客相手をしてくれるトナカイもいます。
ヘラジカだっていますからね。
この1000人ちょっとチッコイ町ですけど、この街中には、病院とか高齢者住宅とか障害者のグループホームやデイセンター、警察や商店街とかちょっとした工場とか、一つの町が機能するものがほとんど揃っています。
それと…ここはやっぱり北極圏のすぐそばで、フィンランドやロシアとも地理的にも文化的にも近いので、ロシア正教の影響を受けた教会もあれば…
キリスト教がスウェーデンに入ってきた頃の、バイキング風の屋根の教会まであります。
この町に流れているカーリックス川はまた、スウェーデンでも有数の鮭の産地で、釣り好きには知られてます。
この町のレストランでは、鮭の料理を食べながら、鮭の話をしますからね…。
釣りといえば、冬に凍った川で穴を開けて釣りをする、こっちでいう「ピンペル釣り」というのも、冬の風物のひとつ。
ここでは、ピンペル釣りの世界選手権なんてのもありますから…。
もっとも、出場国は、お隣のやっぱり北極圏のある国が多いですけどね…。
でも、夏は夏で盛大に祝うことが多く、夏至祭には…どこにも負けない盛大な夏至祭りやりますし…
また、毎年、近郊地域から大勢人が集まって賑わう「夏の市」も開かれます。
この小さな町に、それこそ何千人と集まりますから、この町唯一のホテルも、この夏祭りだけで採算が合うんじゃないかって思うほどですけど、とにかく町の大きさを考えると、大きくて豪華なホテルです。
いや、「夏の市」だけじゃないですね…!
このオーベルカーリックの自然は、夏の白夜の時期は、とにかく輝きます。
でも、圧巻は、やっぱり「オーロラ」でしょう。
早い時には9月の末から、遅くは4月の初めまで、とにかく天気が良くて空が見えれば、何日も…毎日でもオーロラが見えます。
何だか、まるでオーベルカーリックスの観光大使になったような気分ですけど…
スウェーデンは自然が素晴らしいという中で、オーベルカーリックスはその多様性が僕は好きです。
車でキャンプして、ラップランドに来るなら、ここは絶対外せないですね…。