前に、スウェーデンの「フィーカ文化」について書きましたけど、また…コーヒーの話です。
イタリアといえばエスプレッソ、フランスはカフェ・オ・レとか…
あるいは、コーヒーはブラジルだろうとか、いやグアテマラやキリマンジャロがあるじゃないかとか…まぁ、世界にはコーヒーを巡ってもいろいろあるみたいですが…
じゃあ、世界中でコーヒーの消費国ってどうなんだろうと思ってみると、意外な世界地図が見えますね。
コーヒーの年間消費量の多い国というと、
1位:ルクセンブルク 2844杯
2位:フィンランド 1212杯
3位:デンマーク 946杯
4位:ノルウェー 921杯
5位:スイス 799杯
6位:スウェーデン 789杯
7位:ドイツ 679杯
8位:オーストリア 646杯
9位:カナダ 635杯
10位:スロベニア 606杯
ということで、イタリアもフランスも、あのスタバのアメリカも入ってない…。
「イギリス人は、紅茶ばかり…」と思っていたら…
11位:ブラジル 582杯
12位:イタリア 577杯
13位:フランス 547杯
14位:イギリス 533杯
なんと、あのエスプレッソのイタリアやカフェ・オ・レのフランスの次に多いらしく、
アメリカはずっと下がって、411杯で20位、日本はというと、340杯で30位です。
こうしてみると、2位にフィンランド、3位と4位はデンマークとノルウェー、スイスを5位において、スウェーデンは6位ですから、北欧勢が上位を占めています。
ルクセンブルグが、2位のフィンランドの倍以上の消費国でダントツ1位というのは、ちょっと意外でしたけどね。
でも、とにかく北欧の人はコーヒー好きで、僕も含めた外国からの移住者も、こっちにいると決まってコーヒー依存症になります。
何せ、「フィーカ文化」のスウェーデンですから…
昔、1ヶ月くらい日本に滞在してスウェーデンに帰る時に、それまで日本で毎日コーヒーは飲んでいたんですが、SASの飛行機に乗ってあのスウェーデンの濃いコーヒーを飲んだ途端、「あ〜、ようやっとコーヒーが飲めた!」って気になったもんでした。
はい、スウェーデンのコーヒーは濃いんです。
で、スウェーデンのコーヒーですけど…
大きく分けて、二種類の入れ方があって…、一つはどこでもよく知られているドリップ型のコーヒーと…
もう一つは、沸かして飲むコーヒー。
これは、コーヒーを煮て、お湯が沸騰して少ししてからコーヒーが沈むのを待って、上澄みのコーヒーを飲むというもの。
このタイプは、どちらかというと北の方の人に好かれていて、フィンランドでも、こういうコーヒーの方が好きな人が多いみたいです。
そういえば、西部劇なんかによく出てくるカーボーイが火をおこして、ヤカンとか鍋みたいなもので熱そうなコーヒーを飲むシーンがありますけど…
北の方の人間は、昔からこういう飲み方をしていたみたいです。
コーヒーといえば、昔こんなことがありました。
音楽をやっていた頃、演奏していたクラブのキッチンで立ち食いをしてその後コーヒーを飲んだんですが、当時はコーヒーに砂糖を入れて飲んでいたんで、出された砂糖の皿からスプーンで入れて飲んで…思わず「ブ〜っ」と吹き出してしまったんですよ…。
砂糖と思ってタップリ入れたら、実は塩!
キッチンにいたユーゴスラビア人のコックががイタズラして入れたらしく、僕が口から吹き出したのを見て、手を叩いて笑ってました。
いや〜、冗談っていうのもいろいろあるだろうけど、コーヒーに塩を入れてイタズラするなんて、聞いたこともないじゃないですか〜。
そしたらそのユーゴスラビア人、急に真面目な顔して、「いやオターキ…サーメ人はコーヒーに塩を入れるんだ…」って教えてくれました。
サーメの人は、1年の多くを雪と過ごしますし、伝統的に遊牧生活をしていたので、外での生活が多く、集団で暮らすよりも、自然の中で少数で過ごすことにも慣れています。
そして、そんな厳しい移動の暮らしの中では、昔も今も、一杯のコーヒーは貴重なひと時です。
夏はともかく、冬になるとコーヒーのお湯は雪を溶かして沸かしていたそうですけど、溶けた雪の水は、地下水とは違って塩分がないので、サーメ人は塩分を取るために、コーヒーを飲む時に手の平に塩を乗せて、それを舐めながらコーヒーを飲んだそうです。
それと…北の方の人…特にサーメ人は、コーヒーを皿で飲むという習慣もあったらしい。
コニーを煮て飲むと熱いので、皿に落として冷まして飲むってことらしいですけど…
こうして考えると、塩を舐めながらコーヒーを飲むというのも真実味はありますね。
砂糖にしても、一般的にはサラサラとした砂糖をコーヒーに入れるというのが普通ですけど、北の方の人は、カチカチに硬い固形の砂糖を口に含んで、コーヒーを口に含んで、砂糖を溶かしながら飲むという飲み方する人が今でもいます。
そんな風に、サーメ人にとってはコーヒーも大事なので、得意な工芸技術を使って、独特な砂糖入れも作っちゃう。
コーヒーのカップにしても、個性があります。
冬の長くて暗い夜には、コーヒータイムも幻想的になるし…
みんなが集まる時には、ラップ小屋と焚き火と昔話が夜の集いの憩いのひと時になるとか…
僕は、焚き火にしろサウナの火つけにしろ、火をじっと見るというのが好きなんですけど…
ある時ラップ小屋でサーメ人の長老と話をした時に、二人で焚き火の火をじっと見つめながら、その長老が…「焚き火の火って、ネアンデルタール人には今のテレビだったんだよな〜」と呟いたのを覚えてます。
僕は道産子で、小さい頃は…アイヌ人が火を囲んで昔話を語り部のように伝えたもんだ…というのを聞いて、すごくロマンを感じたもんですけど…
アイヌと同じように文字を持たなかったサーメ人にとっては、焚き火を囲みながらの昔話や民話の伝承が、現代人のテレビと同じような役割をしていたんでしょうね。
ただの「お茶を飲む」感じだけではない、スウェーデンの「フィーカ文化」…
コーヒーを飲むにも、いろんな飲む方があるんだと…夜のコーヒーを飲みながら…思いました。