一生懸命とラーゴム(Lagom)

暮らしと文化

言葉の話になりますが…

日本語の「一生懸命」という言葉…

「一生懸命」なのか「一所懸命」なのかということは、語源を考えれば違うけど、とりあえずは「頑張るっ!」ってことでしょうが、それはさておき…

これは、四字熟語ですけど中国語でもなく、英語にもスウェーデン語にもなく、外国語では直訳出来ない言葉です。

例えば、「根性」って言葉がありますよね?
外国語では、これも、英語にもスウェーデン語にもなく、直訳は出来ません。

もっとも、フィンランドには「シッス=sissu」という言葉があって、それは日本語の意味と全く同じで普通に使ってますけどね。

ところが、これが英語やスウェーデン語だと、「忍耐」とか「頑張る」とか「力をだす」とか…いろんな表現になるけど、「根性がある」とか「根性で…」とか、単一の言葉として「根性」というのは訳せないです。

日本語には、他にも、「おもてなし」だとか「おかげさまで」とか…外国語に中々訳しづらい言葉がありますが…
スウェーデンにも、一言では言い表せない言葉があります。

その一つが…
ラーゴム(Lagom)という言葉です。

日本でもスウェーデン通の人は、「あ〜、それね…」というくらい知られていると思いますが、スウェーデン人は、一般的に、「Lagom」というのは、他の言語では直訳出来ない、スウェーデン独特の表現だ」と思っています。

日本語に訳すと、「ちょうどいい」、「適度」、「良いあんばい」などと訳されるんですが…
日本語では、「ちょうどいい気温」とか「適度に対応する」とか、「いい塩梅の味」とか、言わんとすることによって、その表現も変わってきます。

ところが、Lagomというと、それは温度であったり、仕事の量であったり…風の強さであったり…食べ物のことだったり…時には人との距離感だったり…

つまり、何事においても中興というか、強くもなく弱くもなく…まさに、日本語で言う「ちょうどいい」なんですが…

これは、ある意味…スウェーデン人のものの見方を表している言葉でもあるんですね。


食べ過ぎないような「ラーゴム」な量…


体に無理のかからないラーゴムな運動…


豪華でも貧相でもないラーゴムな住居…


ラーゴムに太っている方が長生きする…


賭け事もラーゴムに…

なんて、いろいろありますが、仕事だって、そうです。
少なくもなく、多くもなく…正に…スウェーデン風に…

仕事をサボるのは良くないけど、精を出しすぎず…ほどほどに…ってことですけど、

これは、つまり…スウェーデン人としての生き方…というか…
スウェーデン人の哲学とか、社会通念みたいなもんだと思います。

なにせ、

スウェーデン人にとっては、日本の味噌や醤油のようなバターにさえ…
「ソフトでラーゴム」っていうのが商標になっていて、一番売れてる…というくらいですから…

おもしろいのは、

日本人が良く使う、「頑張る!」とか「一生懸命」というのは生き方についての一つの考えで…何事にも「一生懸命頑張る」というのは、日本人の誰もが思う「美徳」みたいなもんじゃないですか?

「頑張る」というのは、限度とか限界という線はなくて、物事に対して、「その人が出来る限り頑張る」ってことだと思うんですが、要は、一つのことに対して、「出来る限り力を入れる」ってことですよね?

ところが、スウェーデンでは、こうはいかない。
「出来るだけ頑張る」んじゃなくて、「ほどほどにやる」ってことです。

実は、スウェーデン人と日本人には、文化的にも思考的にも似ているところがたくさんあるんですが…生きていく上とか生活の中では、全く逆の考え方があるというのが、この、「一生懸命」と「ラーゴム」に表れているんじゃないかと思います。

そう考えると、言語とか言葉ってまたおもしろいもんだと思いますね。

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