ダーラナへの道!

スウェーデン各地

ストックホルムから車で北西に向かって約215km、高速道路を約2時間ちょっと走ってボーレンゲ(Borlänge)に入ると、そこからはダーラナ(Dalarna)地方です。

日本では、よくダーラナ地方のことを「スウェーデンの心の故郷」というように言われているようですけど…

スウェーデン人に「あんたの心の故郷ってどこ?」と聞いたら、普通は「う~ん…」と一息も二息も考えて、「もしかしたら、ダーラナかな…?」と答えると思うんですよね…。

スウェーデンじゃ「心の故郷」って言い方はしないので、「スウェーデンのハート」という表現になると思うんですけど…スウェーデン人は大体において自尊心も強い方だから、地方の人に聞くと、まずは自分の地域がそうだろうと思うでしょう。

ちなみに、参考のためにスウェーデン語でダーラナというのをネットで検索してみると、「スウェーデンの心の故郷」というフレーズはなく、

その代わり「スウェーデンのハート」という言葉が、スウェーデンの中部にある地域のいくつかのサイトにありました。

これはきっと、「心臓部」という地理的な意味で使われているんだろうと思います。

ところが、日本のHPにはそれが軒並みに出ていて…見ると、そのほとんどが旅行業者やスウェーデングッズの販売のサイトです。

おそらく、観光やグッズの販売などでダーラナの魅力を伝えるために、そのキャッチフレーズを使っているんじゃないかと思いました。

推測ですけどね…。

とは言え…、確かにダーラナ地方というのは、

原野が広がり、サーメ人の文化もあるし、森や湖はもちろん、他の地方には少ない山岳地帯もあるという自然にも恵まれ…赤色の家や小屋や、さらには民謡や民族衣装も有名で…

とにかく「スウェーデンらしさ」がいっぱい詰まっているところです。

何よりも、スウェーデンの心臓の位置っていうか、真ん中の中部地方にあるので、「スウェーデンのハート」というのも、あながち間違いではないかもしれません。

でも、僕が「ダーラナ」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、やっぱり民謡や民俗音楽とか夏至祭ですね。

スウェーデンの音楽といってもいろいろあるんですが、こちらのポピュラー音楽は、日本ではスウェーデンポップスとも呼ばれ独自のジャンルにもなっていて、日本でも流行るくらいですから、日本人にも響くメロディーを持っています。

アメリカのカントリー音楽では、アイルランド民謡と同じようにスウェーデン民謡の影響がたくさんあって、これもアメリカ人には馴染みやすいものがあります。

ちなみにですが、あの世界的にポピュラーなABBAのリーダーのベニー・アンダーソンは、ダーラナでは有名な民俗音楽一家の一員で、小さい頃から神童ぶりを発揮していたそうです。

その他にも、スウェーデンにはダーラナ出身のミュージシャンや、グループがたくさんいます。

そんな訳で、

ダーラナは誰しもが認める「スウェーデン音楽の故郷」でもあるし、また全国にあちこちにある民俗衣装の中でも、やっぱりダーラナの民俗衣装というのは最もスウェーデンらしいものだと思います。

それと、スウェーデンに来る外国からの観光客が購入する「お土産」の中で、圧倒的に多いのは、何と言っても「ダーラへスト」と呼ばれる木彫りの馬でしょう。

ストックホルムの観光お土産店に行くと、とにかくこのダーラヘストがいたるところに並んでいて、ある意味壮観です。

これは、昔からダーラナ地方に生育していた馬の木彫りを、遊びとして家庭で子供に作らせていたものが、やがてこの地方のお土産として各地で売られて…、そのうちに、スウェーデンを代表する物産品となっていったというものです。

思い出したんですけど…

僕がストックホルムに来て少し経った頃、デパートの売り場でダーラヘストを見て、ふと底の方を見てみたら、なんと「Made in Japan」と書いてあったのを見てびっくりしたことがありましたね…。

まだ60年代の頃でしたけど…それ見て「日本人の商魂はすごい!」と思ったもんです!

ちなみに、僕は札幌生まれの「道産子」ですけど、「道産子」というのは北海道に生息していた馬のことなんですが、昔から北海道のお土産としては「木彫りの熊」が有名で、肝心の馬のことはあまり知られてなかったですね…。

すいません、横道にそれました…

もう一つ、ダーラナをして敢えて「スウェーデンの心の故郷」というものがあるとすれば…

1500年代に、当時の国王グスタフ・ヴァーサがデンマークと戦争をして、一時は負けそうになったグスタフ・ヴァーサ国王がダーラナ地方に逃げたんですが…1521年にグスタフ・ヴァーサ国王の軍隊が、デンマーク王のクリスチャン2世の軍隊をダーラナで破って、結局この戦争に勝利して…

その後グスタフ・ヴァーサ王は、「スウェーデン建国の父」と呼ばれて今に至っている、ということがあります。

スウェーデンはバイキングの国ですから、昔からあちこちで戦いはあったんですけど、このスウェーデン・デンマーク戦争に勝利してからはヨーロッパでも強国として栄えましたから、この1500年代の建国というのは、スウェーデンの歴史でも誇り高い出来事であることには違いありません。

また話は飛びますが…

ストックホルムにある、世界的にも有名なヴァーサ博物館に展示されている当時世界最大の戦艦の名前も、このグスタフ・ヴァーサから来たものです。

そのグスタフ・ヴァーサ国王が、セーレン(Sälen)からモーラ(Mora)に逃亡した94kmの道は、その後スウェーデンの有名なスキー大会であるヴァーサロップ(Vasalopp)となって、今は日本でも、北海道でヴァーサスキー大会として盛んに催されています。

夏至祭りは、文字通り夏至のお祭りで、スウェーデン全国で行われ、観光的には、ストックホルムの野外博物館であるスカンセン(Skansen)での夏至祭りが有名かもしれませんが、

ダーラナ地方の夏至祭りは、やはり民俗音楽や民族衣装とのコンビネーションもあって、最もスウェーデンらしい夏至祭りだと思います。

ところで、

スウェーデンには、アンダーシュ・ソーン(Anders Sorn, 1860~1929)はじめ、世界的に有名な画家が大勢いますが…

その中でも、カール・ラーション(Carl Larsson, 1853~1919)は、最もスウェーデンらしい画家であるといっても過言ではないと思います。

彼は元々ストックホルムのガムラスタンに生まれたんですが、その後ダーラナに移って、特にダーラナ地方独特の家屋や家具なども含めた風景画を描きました。

僕がスウェーデンに来てから間もなく、ストックホルムの美術館でカール・ラーションの絵画を見た時に、「あ、これがスウェーデンなのか…」と、強く印象に残ったのを今でも思い出します。

その後ダーラナのファルーン(Falun)で亡くなりましたが、ファルーン市にある小さな町スンドボーン(Sundborn)には、彼が住んでいた家がカール・ラーション・ゴーデンという博物館・美術館として残され、多くの観光客を集めています。

カール・ラーションは、王立美術学校に学び、その後フランスに移って活動もしましたが、帰国後は「王立美術学校に反逆する芸術家協会」に参加して、それは、その後の「反逆者運動」(オポーネント、pponent)に繋がり、やがてそれは、スウェーデンの近代美術の動きを前面的に動かすキッカケにもなりました。

ダーラナの話がスウェーデンの芸術運動の話にまで飛んでしまいましたが、ダーラナというのは、とにかく「スウェーデンがいっぱい」の地方です。

特に夏の白夜の時期、そしてキャンピングには「最高」ですね!

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