平等と公平の話…

暮らしと文化

ずいぶん前になりますが…

スウェーデンのマスコミが、政権を長く維持している、いわゆるリベラルと言われる社会民主党と、日本で言えば自民党に当たる穏健党の違いを、端的に比較していました。

それによると、マスコミに取り上げられた形で、今まで社会民主党が掲げているフレーズで一番多いのは「平等」であるのに対して、穏健党が一番挙げているフレーズは「公平」という言葉だそうです。

「平等=Jämlikhet」と「公平=Rättvisa」は、似たような意味にも取られるし、平等=公平と考える人も多いかと思うんですが…

よ〜く考えると、時には真逆な意味を持つんですね。

何かを分け合う時に、平等に分けるというのは公平に分けるのと同じか…というと、まるっきり形が違う場合があります。

例えば…

僕がスウェーデンで満席のロックコンサートに行って、後ろの方の立ち見席で見るとします。

僕は普通のスウェーデン人より背が低いので、背伸びをしても見えるのがやっと…という事実がありますよね。

もしかしたら、きっと背伸びをしても届かないでしょう。
何せ、スウェーデン人は僕よりも首ひとつは背が高いですから…

それで、僕だけが見えないのは他の見える人と比べると「不公平」なので、椅子か台をもらって、そこに立つとみんなと同じように見ることが出来ます。
これで、僕はみんなと「平等」になるということですよね。

これを、僕が「不平等を正して公平にしてもらった」というと、必ず「それは公平ではない、不公平だ」という人が出てきます。

「公平」という立場から見ると、僕だけがその椅子か台をもらうというのは「不公平」なんですね…

僕が椅子や台をもらうのであれば、他の人にも同じように配って、初めて「公平」になるというわけです。

そうすると、今度は「平等」にしてもらった方がまた「不平等」になり、「じゃあ、それを公平というのか?」ってことになって、これがまた延々と続く…という話です。

平等を大切にすれば、持ってない人が持ってる人と同じようになるように分配しなければならないけど、
公平が大切とすれば、人には同じように分配しなければならないっていうわけです。

ちなみに…ですけど、
日本とか英語圏では、この解釈が全く逆ですね。

みんなに同じように与えることを「平等」と言い、同じにするために「違うように」与えることを「公平」と言っているようですけど、

スウェーデンの政党の主張から見ると、逆の話です。


社会民主党が主張するのは「平等」で、


穏健党では「公平に…」です。

僕がスウェーデンに来た頃、仕事につくにはスウェーデン語が出来ないと就業できないので、職安から1ヶ月分の給料と同じ額の補助金をもらって、スェーデン語の学校に2ヶ月行きました。

そこでスウェーデン語を習って、話せるようになると仕事をして、税金を払って…次の「スウェーデン語が話せない人」がまたその税金から出る補助金で学校に行って…となるわけですけど…

これ…特に、一般の裕福ではないスウェーデン人からは、表立っては言われないけど…不平や不満が聞こえて来ましたね…

「スウェーデン語を話さない外国人だけが、仕事もしないうちから補助金をもらって、こっちは暮らしもやっとなのに、何ももらえないのは不公平だ」って…

人が平等になるために、持てる人には税金を多く払ってもらって、持ってない人に何かの形で分配するというのは、一見当たり前に聞こえますけど、

それを、不公平という人もいる。

でも…
でも…ですよ…

背の低い僕が、みんなと同じように見えるために台をもらって平等になるとしたら…やっぱり、それは「公平」なんじゃないでしょうかね?
だって、人と同じ立場に立つため…ですから…

政治や経済とか福祉とか…とにかく「分配」が必要な部分では、「平等」にするのか「公平」にするのかで…あっちは右だとか左だとか騒ぎます。

前に税金の話をしましたけど、税金の多い少ないよりも、それが弱いものを平等にするために分配するのか、それともみんなに公平にすべきかってところで、右だ左だと言って、協調は出来ないって言ってます。

最近は、世界中で格差が問題になってるけど…

「格差がなくなるように、金や手段を平等に分配しろ!」という人がいるかと思えば…

「金持ちは、それだけ社会に貢献してるんだから、格差があるのは当然だろ!
配るんなら、みんなにそれぞれ公平に分配しろ!」って、また格差が広がる…。

それを右とか左とかで分けるのもまた単純な話だけど…
スウェーデンと日本や英語圏で「平等」と「公平」の解釈が逆だというのも、また変な話ですよね…

考えてみれば、政治の世界じゃ、「平等」だの「公平」だの…都合の良い時に、それぞれ都合の良いように解釈してるんでしょうかね?

そこで、単純な僕らが振り回されて…なんて…
そこにいくと、ロックの世界は穏便で…平和で、良いもんです!

アリーナで何万人も集めるロックスターは、ロールスロイスなんか何台持っていたって…だ〜れも、な〜んにも言わないです。
当たり前だと思ってるし…

それに、見えなくても「そんなの関係ねぇ!」と思ってるのがいっぱい!

そこで、「俺はただの観客だけど、俺たちがいるからこそ、お前はステージで怒鳴っていられる!」、「だから、俺にも少なくともBMWかベンツをよこせ!」なんて、誰〜も言わないですから…

もう、平等も公平も関係ないっ!

あ、こういう話は…お呼びでない…
失礼しました!w

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