スウェーデンは、多国籍国家です。
人口の23%は外国から移住してきた人と言われてますが…
バイキングのルーツを持つスウェーデンですから、昔からいろんな国と交流があるんで、一体純粋なスウェーデン人ってどのくらいいるのか…って話ですよね。
それにしても僕が驚いたのは、今のスウェーデンで話されている言語は、少なくとも200カ国語あるって知った時でしたね…
200カ国語ですよ!
普通の人は、世界の国々の数を100カ国も言えますかね?
その倍の違う言語を話す人が共存しているわけですから、まさに多国籍国家としか言いようがない…
共通言語はもちろんスウェーデン語ですけど、そうなると、バイリンガルどころか、いくつもの言葉を話す人がめちゃくちゃいるってことです。
複数の言語を話す国というと、ドイツ語とイタリア語、それにフランス語の3ヶ国語を話すスイスや、アラブ語とフランス語を話す北アフリカの国とか、世界中にはその他にもたくさんあります。
その中で、スウェーデン語は北部ゲルマン語に属するので、フィンランドを除く他の北欧語やドイツ語、オランダ語との共通点はたくさんありますし、
またスウェーデンは、ヨーロッパではイギリスとオランダに次いで3番目に英語が通じる国とも言われてます。
なので、スウェーデン人が外国語を話す伝統は昔からありましたが、
スウェーデンで多国語を話すことが話題になったのは、1970年代に「2ヶ国語教育」というのが議論されたのが初めてではなかったかと思います。
この「2ヶ国語教育」というのは、単にスウェーデン語と外国語を話すには?というより、
外国からの移住者が増えて、両親がそれぞれ違う母国語を話す子どもが、スウェーデン語も親の言語も、どちらも片言言葉になる場合が多いので、
どうやって子どもの「言葉の発達」を促して、きちんとしたスウェーデン語なり親の言葉が話せるようになるかという教育上の話でした。
当時は、ノーマライゼーションとかインテグレーションというものが求められていた時代です。
そして、当時から増えて来た移民の子どもたちの間では、きちんとしたスウェーデン語を話す子どもと、そうではない片言のスウェーデン語を話す子どもが実際にいたわけです。
その議論が起きた当時は、「子どもが片言言語にならないためには、一つの言語をきちんと話すようにしないといけない」という説が有力的で、まず一つの母国語をしっかりと教えてから、次の言葉を教えるということが推奨されました。
子供にとっては、話す言語は自分のアイデンティティーに繋がるので、片方の親がスウェーデン人でない場合は、その親の言葉は「覚えたくない」という心理も生まれます。
そのため、
片方の親がスウェーデン人だとスウェーデン語自体は問題がありませんが、
例えば片方が日本人の親だとすれば、
子ども自身のアイデンティティーがまだ確立されていない時期には、子どもはスウェーデン語を話したいために、
「自分の子どもに、日本というアイデンティティーを、うまく伝えられない」という悩みが出てきます。
また、両方の親がそれぞれ違う国出身で、家庭で使う共通語がスウェーデン語だとしたら、親自身のスウェーデン語も「片言言語」なために、子どもは片言言葉しか覚えられなくなってしまう危険性もあります。
僕の場合は、相方さんががフィンランド人という、両方とも違う国から来ていて、お互いはスウェーデン語で…というパターンの中で子どもが生まれたんですが、子どもが生まれる前から、子どもにはお互いの言葉で話そうと決めていました。
つまり、家の中では日本語とフィンランド語とスウェーデン語の三つの言葉が行き交っていたわけです。
よく見ていると、例えば僕が「こっちへおいで」というのを母親は「トレー」と言うんだと子どもは理解しているのがわかったし、そう言う意味で子どもの頭は柔軟だとも思いました。
男の子と女の子ですが、両方とも小さくて家にいることが多かった頃は、日本語とフィンランド語はそれなりに話すけど、スウェーデン語は全く話しませんでした。
言葉って、聞いているだけでは、意味はそこそこわかったとしても、話さなければ覚えないんですよね…
で、子どもがそれぞれ庭に出て、砂場かなんかで他の子どもたちと遊びだす頃になると、それまで家で聞いていただけで溜まっていたスウェーデン語がバーっと吹き出たように、スウェーデン語を話すようになりました。
そうすると、周りはスウェーデンなので、日本語はマイノリティー言語になって、どうしても片言言葉になりやすい。
おまけに、日本語をきちんと教えるには、敬語だの男言葉や女言葉だの、ものの数え方だの…他の言語にない複雑さもあります。
英語やスウェーデン語だと、それこそ「You」と一言で言えるものが、日本語だと「お前」と言うのか「君」と言うのか「あんた」と言うのか「あなた」と言うのかって話です。
なので、他人と話す環境を作るとか友達を作るとかいうこととが肝心ということで、週に1日開かれる日本人補習学校というのにも行かせました。
子どもは嫌がっていましたけどね…
「友達はみんな土曜日は休みなのに、何で勉強しなくちゃいけないの?」です。
それと…
一つの言葉、例えば「大きい」と言う時には、出来るだけ反対語の「小さい」と言うものをくっつけて話すという工夫も必要だということもわかりました。
「それは、大きいよ、小さくないよ」とか…
また、難しいのはやっぱり子ども自身のアイデンティティーとの問題でしたね…
スウェーデン語を話すようになって、僕が日本語で話していると、いろいろ聞いて来ます。
「それって、どういう意味?」
「それは○○ってことだよ」
「う〜ん、何…わかんない?…スウェーデン語で何て言うの?」
ここで面倒臭くなって、思わずスウェーデン語で意味を教えたくなるんですが…ここで親が負けちゃうと…結局は片言言葉になっちゃいます。
日本語の意味を聞かれたら、日本語で答えることですね。
だって、僕らはそうやって言葉を覚えて来たわけですから…。
そんなことをしながら、子どもも3ヶ国語を話すようになり、中学校へ行く頃には自分から選んで英語のクラスに入ったりして、今ではマルチリンガルになりました。
一つの母国語をまず教えて、それから次の言語を教えるとバイリンガルになる。
でなければ、片言言語(スウェーデンでは「半言語」って言ってます)になってしまうと教えられましたが、
家庭に二つの言語があって、その一つをまずきちんと教えるより、三つの言語が行き交う方が言葉をちゃんと話すようになるというのを、僕自身が体験したわけです。
なので、
もし国際結婚したり、あるいは日本人同士で海外に住んで子どもが生まれて、その子どもに日本語を教えるとしたら、
とにかく日本語を話すこと、それと子どもが日本語の意味を聞いたら、絶対に日本語で答えることをお勧めします。
大坂なおみさん…お母さんもずっと日本語喋ってたら良かったんじゃないのかな〜なんても思うことありますけど…
大坂なおみさんも「日本人って誰?」ということに新しい光を当ててくれたみたいだし、今の彼女のたどたどしい日本語も「カワイイ〜!」なんて人気もあるそうだから…バイリンガルも良いけど…
世の中も変わって来るもんだな…と思います。